COLUMN

2024.07.09 BIM/CIM

CIMを土木・建設業界で導入するメリット6つ! 活用シーンも併せて解説

現在、日本の企業各社がデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けて積極的な取り組みを進めていますが、特に土木業界はそのデジタル化の余地が大きい分野とされています。
業務の効率化と品質向上を目指し、さまざまなアプローチでデジタル化が求められており、中でも土木業界におけるDXの中心的な手法として挙げられるのがCIM(Civil Infrastructure Management)です。
CIMの導入は、具体的に土木業界へどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

本記事では、CIMの概要に触れた後、土木・建設業界の課題や、CIM導入によって得られるメリットなどについて詳しく解説します。
最後までお読みになって、ぜひ参考になさってください。

まとめ

  • ・CIMとは、建設業務全般の効率化を目的として国土交通省が提唱した取り組み。
  • ・土木業界は長時間労働や人手不足などの課題を抱えており、CIMによってそれらを解決できる可能性がある。
  • ・CIMは設計・施工・維持管理などで活用でき、土木工事プロジェクトにおいて欠かせない存在となる。

CIMとは?

CIM(Construction Information Modeling)は、国土交通省が2012年に提唱した建設業務の効率化を目的とした取り組みです。当初は建築分野で進められていたBIM(Building Information Modeling)に基づいて始まりました。

この取り組みは、3次元モデルを中心に情報を共有することで、建設プロセス全体の効率化と高度化を図っています。2016年3月までの実証試験により、単に情報を3次元モデルに集約するだけでなく、建設プロジェクトのライフサイクル全体を見通したアセットマネジメントや、プロジェクトごとの業務管理の必要性がクローズアップされました。

現在、土木と建築の両分野を包括する「BIM/CIM」というアプローチが採用され、情報管理の一元化と3次元モデルを活用した可視化が並行して推進されています。

国土交通省は令和5年度より直轄土木業務・工事において3次元モデルの作成・活用を義務化、いわゆる「BIM/CIM原則適用」を定めました。

原則適用で対象とする業務・工事は

・土木設計業務共通仕様書に基づき実施する設計及び計画業務

・土木工事共通仕様書に基づく土木工事(河川工事、海岸工事、砂防工事、ダム工事、道路工事)

・上記に関連する測量業務及び地質・土質調査業務

とされています。

原則適用の対象としない範囲は

・単独の機械設備工事・電気通信設備工事、維持工事

・災害復旧工事

が該当します。

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土木・建設業界が抱える課題とは?

土木業界には、無視できない課題が山ほどあります。
以下で詳しく解説します。

長時間残業と休日出勤の問題

建設業界では、長時間の残業や週末の出勤が問題となっており、施工時期平準化の導入等で労働環境の整備が進められています。

国土交通省では直轄土木工事における週休2日工事は令和5年度から原則すべての工事で実施するよう対象を拡大しています。

建設業における平均的な休日の取得状況は、民間工事をメインに受注している企業よりも、公共工事をメインに受注している企業の方が4週8休(週休2日)が進んでいることが調査結果で明らかになっています。(令和6年度資料)

※参考:国土交通省.「最近の建設業を巡る状況について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001734007.pdf

高齢者の大量退職による技術者不足

令和4年の建設業の平均就業者数は55歳以上が35.9%、29歳以下が11.7%と高齢化が進行しており、次世代への貴重な技術ノウハウの継承が大きな課題となっています。

※参考:国土交通省.「建設業を巡る現状と課題」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001610913.pdf

女性従事者の少なさ

日本政府は「1億総活躍社会」を推進していますが、土木業界における女性の参加は依然として低い状況です。

このような課題に対し、建設産業がこれまで以上に女性が就業しやすい業界を目指し、平成26年8月から国土交通省と建設業5団体共同で「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定し、官民一体で取り組みを行っています。

建設業5団体

・(一社)日本建設業連合会
・(一社)全国建設業協会
・(一社)全国中小建設業協会
・(一社)建設産業専門団体連合会
・(一社)全国建設産業団体連 合会

※参考:国土交通省.女性の定着促進に向けた建設産業行動計画
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001323991.pdf

CIMを土木・建設業界で導入するメリット6つ

先述のように、土木業界には多くの課題があります。
その課題を解決できる可能性があるのがCIMです。
ここからは、土木業界でCIMを導入することのメリットを解説します。

情報共有の一元管理

ガス、電力、水道など複雑なインフラ設計を含む土木作業では、各分野の専門家が連携して工事のプロジェクトを進めます。
これまでは、設計データや測量図の作成には時間がかかりましたが、CIMの導入により、これらの情報を一元管理し、図面や資料の準備にかかる手間を大幅に削減することが可能になります。
プロジェクトに係わる全員が同じデータをリアルタイムで共有することで、認識のずれや作業の修正回数を劇的に削減することが可能です。

効率化による残業・休日出勤の改善

国が改善を進める中でも、土木業界は長時間労働などが未だに深刻な課題です。
CIMの導入により、情報をリアルタイムで共有することで
複数作業の同時進行が可能となり、業務間の工程短縮に寄与します。

人材不足の支援

CIMは作業時間を効率化するだけでなく、部材の数量自動算出により発注事務作業の負担を軽減します。これにより、人員不足や若手技術者の育成にも寄与します。

女性の進出支援

従来、建設や土木作業は「男性の仕事(力仕事)」とされ、女性の進出が少ない状況でした。しかし、CIMの導入により、パソコンを使用したデータ作成やモデリングが主流となり、性別に関係なく誰もが能力を発揮できる環境が整備されつつあります。
これにより、多様性を尊重する職場が形成され、女性が活躍しやすい土木業界の実現が期待できるでしょう。

業務品質の向上

CIMの活用により、土木・建設業務の品質を向上させることが可能です。
設計に関するデータを統合したCIMモデルを活用することで、ヒューマンエラーを減少させながら効率的に設計を進めることができます。
正確な3Dモデルを使用して複雑なシミュレーションを実施し、設計段階での修正や施工段階での手戻りを削減することができます。

ハイテク活用の促進

CIMの導入は、土木・建設業界におけるハイテク活用を推進するきっかけとなります。
極めて正確なCIMモデルを活用することで、専門知識がない関係者でもビジュアルで情報を理解しやすくなるでしょう。
また、施工現場でのVRやARの活用を促進し、作業の効率化を図ることが可能です。
さらに、維持管理業務においてもCIMモデルを活用することで、点検や補修工事の品質向上に寄与します。

土木・建設プロジェクトにおけるCIMの活用シーン

ここからは具体的な使用場面として、土木・建設プロジェクトの一連の施行工程におけるCIMの活用シーンを詳しく見ていきましょう。
設計、施工、維持管理の各段階におけるCIMの具体的な利用方法について解説します。

設計段階

設計段階でCIMを活用することは、地元住民への説明や関係者協議で視覚効果を活用した現場イメージの説明をできることや、設計に必要な建材の数量算出が効率的に行えます。
例えば、従来の2D図面では把握が難しかった鉄筋配置の干渉照査も、CIMモデルを使用することで視覚的に確認できるようになるのです。
これにより、照査の精度向上が期待でき、作業の効率化が図れます。
また、設計段階で支障物への対処や問題解決もCIMを活用することで迅速かつ正確に行えるでしょう。

施工段階

施工段階では、前工程から引き継がれたCIMモデルを活用することで発注者及び工事関係者間で立体的な形状情報を共有し合意形成をスムーズにします。
さらに安全教育・安全管理や設計変更においてもCIMは利便性を発揮します。
従来の2D図面では理解が難しかった施工手順も、CIMモデルを用いることで3Dで可視化し、関係者に分かりやすく説明できます。
設計変更が必要な場合も、CIMモデルを使って即座に必要なデータを抽出し、スムーズな対応が可能です。
これにより、工事の進捗管理や報告資料の作成が効率的に行われ、ミスの発生を防ぐことができます。

維持管理段階

維持管理段階では、CIMが点検箇所の特定や点検作業の効率化に役立ちます。
CIMモデルに必要な情報を事前に組み込んでおけば、重要な点検箇所の位置や構造を迅速に把握できるでしょう。
これにより、過去のデータを素早く参照できるため、点検作業のスムーズ化が図られます。従来の管理方法では時間がかかっていた補修作業や点検の手間を大幅に削減し、維持管理の効率化を実現します。

まとめ

CIMの概要や、土木・建設業界の課題、CIMを導入することのメリットなどを解説しました。
CIMは今後、土木・建設業界に欠かせない技術となると予想されており、導入は避けられない流れとなるでしょう。
早期からCIM運用に向けた準備を進めることで、自社の課題を効果的に解決することが重要です。

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