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施工パッケージ型積算方式とは? 土木工事標準歩掛の違いと期待される効果を解説
施工パッケージ型積算方式は平成24年10月から国土交通省が実施している積算方式です。
土木・建設業界では不可欠な知識と言えるでしょう。
本記事では、施工パッケージ型積算方式の基本に触れた後、実際の計算方法や留意点などを詳しく解説します。
最後までお読みになって、ぜひ参考になさってください。
まとめ
- ・施工パッケージ型積算方式とは、国土交通省が平成24年10月から実施している『積算』方式のこと
- ・施工パッケージ型積算方式は、積算業務の負担軽減、標準歩掛調査の負担軽減など、さまざまな効果が期待されている
- ・施工パッケージ型積算方式は全国統一の枠組みを持っているが、発注者ごとに単価や端数処理に違いが生じることがあるので注意が必要
施工パッケージ型積算方式とは?

施工パッケージ型積算方式とは、国土交通省が平成24年10月から実施している『積算』方式です。
この方式では、機械、労務、材料にかかる費用をまとめてパッケージ化し、それに基づいて施工単価を用いて『直接工事費』の積算を行います。
「施工パッケージ」と呼ばれることも多いです。
施工パッケージ型積算方式の特徴とは?
全ての積算がパッケージ化されているわけではなく、国土交通省の土木工事標準積算基準書には、施工パッケージ以外の積算方法も含まれています。
施工パッケージという積算方式は、受発注者の積算労力を軽減することを目的に導入されました。
この方式では、工種や積算条件(例えば、対象物の仕様、施工方法、施工数量など)を選択すると、自動的に必要な施工機械、労務人員、材料が決定される仕組みになっています。
施工パッケージ型積算方式の目的とは?
施工パッケージ型積算方式は、以下の4つの目的の達成が期待され導入されました。
- 積算業務の負担を軽減する
- 標準歩掛調査の負担を軽減する
- 元請けと下請けの契約の透明性を向上させる
- 価格の透明性を高める
さらに、国土交通省は「通常の舗装工事では、一つの工事について150枚ほどの単価表を作成する必要がある」と過去の資料で述べています。
このことから、施工パッケージ型積算方式の導入には、官民ともに積算業務を効率化したいという意図が汲み取れます。
従来方式との比較
ここからは、従来方式と施工パッケージ型積算方式を比較してみましょう。
具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
従来方式(積上)
各項目(労務・機械・材料単価)に対して基準数量あたりの数量を計算し、それぞれの単価を掛け合わせて、1単位あたりの施工費用を算出します。
施工パッケージ型積算方式
従来方式と比較したときの施工パッケージ型積算方式のポイントは以下の3つです。
- 『数量』の代わりに『構成比』を使用
- 『単価』は『積算地区単価』と呼ばれる
- 『標準単価』と『東京代表単価』という新たな要素が追加
標準単価に対して、労務、機械、材料の各項目の構成比と、積算地区単価と東京代表単価の比率を掛け合わせて、1単位あたりの施工費用を算出します。
構成比とは?
構成比とは、1単位あたりにおける各項目の割合を示すもので、通常は『%』で表されます。
施工パッケージでは、各単価(労務、機械、材料、その他)に対して2種類の単価が設定されています。
積算地区単価とは?
積算地区単価とは、積算対象となる地区の単価を指します。例えば、福岡県で積算を行う場合、『福岡県の単価』が積算地区単価となります。
東京代表単価とは?
施工パッケージでは、基準として東京単価を使用します。
注意点として、東京代表単価は最新のものではなく、前年度の単価が使用されることを覚えておく必要があります。
標準単価とは?
標準単価とは、施工パッケージごとに設定された『この施工条件での一定量あたりの金額』を意味します。
たとえば、「掘削」という施工パッケージでは、以下の条件が設定されています。
- 土砂、オープンカット、押土なし、障害なし、施工量が5,000m3から10,000m3の範囲
この場合、標準単価は263.97円です。(令和3年時点の基準で作成)
施工パッケージ型積算方式では、積算地区単価(例:福岡県の単価)と東京代表単価を対比し、各単価に応じた構成比を掛け合わせて、1単位あたりの施工金額を算出します。
実際の計算方法
それでは、実際に施工パッケージ型積算方式の計算を行ってみましょう。
計算における条件は、以下の通りです。
- 施工パッケージ名:掘削
- 施工条件:土砂、オープンカット、押土無し、障害無し、施工量5,000m3~10,000m3
- 標準単価:263.97円
構成比などは、以下の表を参考にしてください。
規格 | 構成比(%) | 東京(R2) | 福岡(R3) | |
K | 47.55 | – | – | |
K1 | バックホウ(クローラ型) [標準型・超低騒音型・排出ガス対策型 (第3次基準値)] 山積0.8m3(平積0.6m3) | 47.55 | 21,200 | 21,200 |
R | 33.92 | – | – | |
R1 | 特殊運転手 | 33.92 | 24,200 | 21,300 |
Z | 18.53 | – | – | |
Z1 | 軽油 | 18.53 | 116 | 115 |
以下は、具体的な数値を用いて施工パッケージ型積算方式における積算単価の計算を示しています。
積算単価(福岡の施工単価) =
標準単価 × { 構成比【機械】 × ( 積算地区単価【福岡・機械】 / 東京単価【機械】 )
+ 構成比【労務】 × ( 積算地区単価【福岡・労務】 / 東京単価【労務】 )
+ 構成比【材料】 × ( 積算地区単価【福岡・材料】 / 東京単価【材料】 ) }
上記に数字を当てはめた計算が以下です。
積算単価(252.9) =
263.97 × { 0.4755 × ( 21,200 / 21,200 )
+ 0.3392 × ( 21,300 / 24,200 )
+ 0.1853 × ( 115 / 116 ) }
この計算式では、標準単価に各項目の構成比を乗じ、それぞれの積算地区単価と東京代表単価の比率を適用して、積算単価を算出しています。
施工パッケージ型積算方式の留意点

施工パッケージ型積算方式は全国統一の枠組みを持っていますが、発注者ごとに単価や端数処理に違いが生じることがあります。積算地区単価(例:福岡)は必然的に異なりますが、東京代表単価も微妙に異なる場合があるため要注意です。
同様に、端数処理も発注者によって異なることがあります。
現在の積算方法では、施工パッケージ型積算方式が広く利用されていますので、これらの要素をしっかりと把握しておくことが重要です。
施工パッケージを正確に理解し、正しく活用しましょう。
まとめ
施工パッケージ型積算方式は、土木や建設において不可欠な知識です。
これを知っているか否かで、業務効率も各段に変わってくるでしょう。
施工パッケージ型積算方式を正しく理解・活用し、コア業務に時間を費やせるようにしましょう。