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2024.09.20 KNOWLEDGE

現場管理とは?仕事内容や必要な資格、年収、キツイと感じるポイントなど解説

現場管理は、建築や土木の現場で工事が計画通りに進み、安全に、そして予算内で終わるように管理する仕事です。品質を保ちながら、決められた納期までに工事を完成させることが、現場管理の大きな使命ですが、どのような資格やスキル、厳しさを感じることがあるのでしょうか。また、この仕事は年収に見合ったものなのか解説していきます。

まとめ

  • ・現場管理は施工計画に基づき、安全かつ効率的に工事が進むよう、予算、工程、安全性、労務チェック、品質などを管理する重要な役割
  • ・現場管理の平均年収は、経験や役職によって異なるが400万円~800万円程度
  • ・現場管理のキツイ点は長時間労働・肉体労働・安全への責任・スケジュール管理・人間関係など網羅的なスキルや経験が求められる一方、達成感は成果物は極めて大きくやりがいがある

現場管理とは?役割と重要性について

現場管理とは、建築や土木などの工事現場において、施工が計画通りに安全かつ円滑に進むように管理する仕事です。
建築や土木の現場において、施工計画に基づき、安全かつ効率的に工事が進むよう、予算、工程、安全性、労務チェック、品質などを管理する重要な役割を担います。
工事現場には、様々な職種の作業員や多くの関係者が関わっており、それぞれの管理業務が複雑に絡み合いながらプロジェクト全体を進めていきます。品質を保ちながら、決められた納期までに、予算内で工事を完成させることが、現場管理の大きな使命です。
つまり、工事の成功は現場管理の手腕にかかっていると言えるでしょう。

現場管理の仕事内容

現場管理の仕事内容は、多岐にわたるため、工事の工程管理から安全管理、品質管理まで、現場全体を管理するのが仕事です。具体的には、次のような業務があります。

工程管理:スケジュール通りに工事を進める

現場管理の仕事内容の一つに、工事全体のスケジュール管理があります。決められた納期までに工事を完了させるために、各工程の進捗状況を把握し、遅延が発生しないよう管理することが重要です。
昨今の土木分野では施工時期の平準化が注目されており、年間を通じた工事量の安定を図るためには工程管理も重要な要素です。
施工時期が平準化すれば工事従事者の処遇改善や人材・資材・機材等の効率的な活用促進を促し、ひいては公共工事の品質確保へ繋がる重要な取組みとされています。
具体的な工程管理の内容は以下の通りです。

工程内容
工程計画の作成工事全体のスケジュールや各工程の作業内容を明確にする
作業の進捗管理各工程の進捗状況を日々確認し、記録する
関係者との調整各業者との連絡や調整を行い、スムーズな作業を促進する
遅延発生時の対応策の検討と実施遅延が発生した場合の原因を分析し、リカバリー plan を立案・実行する

工程管理を適切に行うことで、工事の遅延を防ぎ、予算内での工事を成功に導くことができます。

原価(予算)管理:予算内で工事を完成させる

当然ですが、予算内で工事を完成させることは非常に重要です。 現場管理者は、資材費や人件費などを緻密に見積もり、予算計画を立てます。例えば、以下の表のように(実際はもっと細かく複雑です)、どのように予算が使われているのかを確認すると、予算状況をすぐに確認できるでしょう。

費目予算額(万円)支出済額(万円)差額(万円)
人件費1,000800200
材料費50045050
外注費30025050
その他費用20015050
合計2,0001,650350

もし、予算超過が見込まれる場合は、次のような対策を検討します。

・作業の効率化
・資材の調達先の見直し
・工程の見直し

予算管理を徹底することで、工事の赤字を防ぎ、利益を確保することができます。

労務管理:作業員への指示や勤怠管理

現場管理の仕事には、多くの作業員への指示や勤怠管理といった労務管理も含まれます。

毎日、多くの作業員が現場で働いています。現場管理者は、彼らが安全かつ効率的に作業を進められるよう、適切な指示を出す必要があります。具体的には、次のような業務があります。

・作業員への指示:作業内容、工程、安全注意事項などの説明
・作業の進捗管理:予定通りに作業が進んでいるか確認
・勤怠管理:作業員の労働時間や休日の記録
・安全教育の実施:事故防止のための教育
・労働環境の整備:安全で働きやすい環境づくり

資材管理:必要な資材を適切なタイミングで手配

現場管理の仕事の一つに、資材管理があります。資材管理とは、工事で必要な資材を適切なタイミングで調達し、無駄なく現場に搬入することです。
資材管理は、工事の進捗や予算に大きな影響を与えます。例えば、必要な資材が不足すると、工事が遅延したり、予定外の費用が発生する可能性があります。反対に、資材を過剰に発注してしまうと、保管場所の確保や廃棄費用など、無駄なコストがかかってしまいます。
現場管理の仕事では、こうした事態を防ぐために、以下の表のような業務を行います。

業務内容概要
資材の需要予測図面や工程表などを基に、必要な資材の種類や量、納期を予測します。
発注業務必要な資材を、適切な納期で納品してくれる業者を選定し、発注します。
納期管理・在庫管理納期通りに資材が納品されるよう、業者と連絡を取りながら、在庫状況を管理します。
搬入計画現場の状況を考慮し、安全かつ効率的に資材を搬入できるよう、計画を立てます。
現場での資材の保管・管理資材の盗難や破損を防ぐため、適切な場所に保管し、必要に応じて移動や整理整頓を行います。
資材の使用状況の確認・調整現場での資材の使用状況を把握し、必要があれば追加発注や納期の調整などを行います。
廃材処理工事で発生した廃材を適切に処理します。

このように、資材管理は多岐にわたる業務であり、専門的な知識や経験が求められます。

安全管理:現場で働く人の安全を守る

建設現場には、高所からの落下や資材の倒壊など、多くの危険が潜んでいます。現場管理の仕事の一つに、このような危険から作業員を守る「安全管理」があります。
安全管理の主な業務内容は以下の通りです。

業務内容具体的な内容例
安全教育の実施作業員に対して、作業内容に応じた安全教育を実施します。
危険予知活動作業前に、作業手順を確認し、潜在的な危険を洗い出して対策を検討します。
安全点検の実施現場の設備や環境について、定期的に安全点検を行い、危険箇所がないかを確認します。
保護具の着用徹底作業員にヘルメットや安全靴などの保護具を適切に着用させます。
事故発生時の対応万が一、事故が発生した場合には、迅速かつ適切な対応を行います。

安全管理を徹底することで、事故や怪我を未然に防ぎ、現場で働く人々が安全に作業できる環境を作ることが、現場管理の重要な役割です。

品質管理:設計図通りに施工されているかチェック

品質管理とは、設計図書や仕様書に沿って工事が進められているか、完成した建物が要求される品質を満たしているかを管理する業務です。具体的には、下記のような方法を用いて品質をチェックします。

材料や製品の検査: 工事で使用される材料や製品が、仕様書に適合しているかを確認します。外観検査、寸法測定、強度試験などを行います。
施工状況の確認: 実際に工事が行われている現場を巡回し、施工方法や出来形が設計図書通りかを確認します。写真撮影や記録を行い、問題があれば是正指示を出します。
品質試験の実施: コンクリートの強度試験、溶接部の検査など、専門的な試験を実施し、品質を客観的に評価します。

品質管理の目的は、施主の要求を満たし、安全で高品質な建物を完成させることです。そのため、工事の各段階で品質をチェックし、問題があれば早期に発見・是正しなければいけません。品質管理を適切に行うことで、手戻りやクレームを防止し、工期の遅延やコストの増加を防ぐことができます。

環境管理:近隣への配慮も重要な仕事

建設工事は、騒音や振動、粉塵の発生など、周辺環境に少なからず影響を与えます。 そのため、近隣住民への配慮は現場管理の重要な仕事の1つです。 具体的には、下記のような業務があります。

業務内容具体的な内容例
工事前の挨拶工事開始前に近隣住民へ工事内容の説明や挨拶を行い、理解と協力を得る
苦情対応騒音や振動などの苦情に対して、誠意を持って対応する。状況によっては、工事時間帯の変更や防音対策などの改善策を検討する
環境保全対策の実施騒音・振動・粉塵の発生抑制対策、排水処理など、環境への負荷を低減するための対策を適切に実施する
関係法令の遵守建設工事に関する環境保全に関する法令を遵守し、環境汚染や近隣トラブルの発生を未然に防ぐ

これらの業務を通して、近隣住民との良好な関係を築き、円滑に工事を進めることが求められます。

その他の管理:クライアントとのすり合わせや施工計画の立案など

これまで解説をしてきた管理以外にも細々とした作業が発生します。例えば、クライアントとの進捗会議や説明資料の作成、現場作業員とのコミュニケーションなど名前のない作業が多数存在します。これらすべてをこなして工事を進めるため、現場管理は大変・キツイと言われることもあります。

現場管理にニーズがある資格

現場管理の仕事には、専門知識が求められるため、業務に関連する資格を取得していると、仕事の幅が広がります。 代表的な資格として、以下のような国家資格があります。

資格名概要
1級・2級施工管理技士建築や土木などの工事現場において、工程管理、原価管理、品質管理、安全管理などを監督する国家資格
消防設備士消防設備の設置や点検を行うことができる国家資格
1級・2級建築士建築物の設計や工事監理を行うことができる国家資格
電気主任技術者電気設備の工事、維持、運用に関する保安監督を行うことができる国家資格

これらの資格は、現場管理の仕事をする上で必ずしも必須ではありません。 しかし、資格を取得することで、専門知識やスキル、実務経験を証明できるため、就職やキャリアアップに有利になるでしょう。

施工管理技士

施工管理技士は、建物の種類や工事の種類に応じて下記7つの資格が存在し、1級・2級と全て分かれています。

種別概要
建築施工管理技士建築物の新築、増築、改修などの工事
土木施工管理技士道路、橋、トンネルなどの土木工事
管工事施工管理技士水道管やガス管などの配管工事
電気工事施工管理技士電気設備の設置工事
造園施工管理技士庭園や公園などの造園工事
建築設備施工管理技士空調設備や衛生設備などの建築設備工事

施工管理技士の資格を取得していなくても現場管理の仕事はできますが、現場責任者(例えば、主任技術者や管理技術者、現場監督など)であれば、上記種別の2級・1級を持つ必要が出てくるため、積極的に狙っていくと、キャリアアップや収入アップにつながる可能性が高く推奨できます。
ちなみに、「監理技術者」は1級施工管理技士、「主任技術者」は2級施工管理技士の資格保有者が該当します。

消防設備士

現場管理では、建物の安全を守るための知識も必要とされます。消防設備士は、その名の通り消防設備に関する専門家で、資格取得によって点検や整備などの業務を行うことができます。

資格区分概要
消防設備士 甲種消防設備の点検・整備・設置・交換ができる
消防設備士 乙種特定の種類の消防設備の点検・整備ができる

消防設備士の資格があると、現場の安全管理を一層徹底できるだけでなく、消防設備に関する業務を内製化できるなどのメリットがあり、手に職をつけられます。そのため、現場管理の仕事をする上で取得を目指す人が少なくありません。現場管理の仕事内容には、安全管理など多岐にわたる業務がありますが、消防設備士の資格は、現場の安全を守る上で特に重要な役割を担います。

建築士

現場管理の仕事をする上で、建築士の資格を持っていると有利になるケースがあります。 建築士は、建物を設計する際に必要な資格として広く知られていますが、実は現場管理の仕事にも活かせる資格です。
なぜなら、建築士の資格を取得する過程で、建築物の構造や法規に関する専門知識を習得し、施工計画の作成や施工管理業務に役立ちます。自分がどのような工事に関わりたいかによって資格取得の有無は分かれると思います。

建築士の種類概要
一級建築士高度な専門知識と技術を必要とする大規模な建築物の設計、工事監理などを行うことができます。マンションや高層ビルといった建物です。
二級建築士一級建築士よりも規模の小さい建築物の設計、工事監理などを行うことができます。イメージとしては戸建てでしょう。
木造建築士木造建築物に特化した設計、工事監理などを行うことができます。

電気主任技術者

電気主任技術者とは、電気事業法に基づいて定められた国家資格です。電気工作物の工事、維持、運用に関する保安監督を行う責任者として、現場管理においても重要な役割を担います。
資格には、電圧や規模に応じて下記の3種類があります。

電気主任技術者資格担当する設備
第一種電圧1000Vを超えるすべての電気工作物
第二種電圧1000V以下(一部制限あり)の電気工作物
第三種電圧500kW未満の自家用電気工作物(出力制限あり)

消防設備士同様に、現場管理の仕事においては、電気設備の安全確保は非常に重要です。電気主任技術者の資格保有者は、専門知識と経験を活かして、安全な現場運営に重宝されるでしょう。

現場管理に必要なスキル

ここでは必要資格ではなく、素質的な話となります。
現場管理は様々な専門性を持った多くの作業員をまとめ、一つの目標に向かってチームを引っ張っていくリーダーシップやモチベーション管理能力が求められます。
具体的には、作業員へ適切な指示を出し、進捗状況や安全確保の徹底を図ること、チームワークを促進するためにコミュニケーションを取りやすい環境づくりや意見交換の場を設けること、作業員のモチベーションを高く保つために目標達成意欲の向上や労いの言葉かけ、働きやすい環境づくりに取り組むことなどが挙げられます。
また、建設現場では予期せぬトラブルが発生することも少なくありません。 そのような場面においても、現場管理者は冷静に状況を判断し、適切な指示を出し、関係者への報告・連絡・相談を行うなど、全体を俯瞰する冷静と視野の広さが必要です。
月並みですが最後に、工期や予算、安全管理など、常にプレッシャーと責任が伴うため、現場管理には最後までやり抜く覚悟と責任感が重要となります。

現場管理の年収は?

現場管理の平均年収は、経験や役職によって異なり、400万円~800万円程度と言われています。責任や負担が大きい分、年収は高めであると言えますが、企業の規模や業種、経験年数によって大きく異なります。
経験を積むとともに、より規模の大きい現場を任されたり、役職が上がることで年収アップが見込めます。また、施工管理技士などの資格を取得することで、資格手当が支給される場合もあります。

現場管理のやりがいと厳しさ

仕事難易度や成果物の物理的な大きさから、仲間とやり遂げた達成感ややりがいがある一方で、肉体的・精神的にも厳しい労働環境に置かれることも少なくありません。

厳しい労働環境の例説明
長時間労働工事の進捗状況によっては、残業や休日出勤が発生することがあります。自分だけでなく、関係者も巻き込むため、甘い管理が命取りになることもあります。
厳しい納期と予算管理予算内で納期に間に合わせるために、プレッシャーを感じながらもイレギュラーの対応では柔軟さを求められることも多くあります。
安全への責任現場の安全・命を守る責任は大きく、作業員や近隣住民を気にしている必要があります。
気象条件に左右される作業環境屋外での作業が多いため、暑さや寒さ、雨など、天候に左右されることがあります。
重機や高所作業など、危険を伴う作業現場では重機を使用したり、高所での作業を行うこともあり、危険と隣り合わせな状況もあります。
体力勝負な側面シンプルながら厳しいのは、現場を歩き回ったり、重い資材を運んだりすることも多いです。

現場管理の人手不足解消の目途

現場管理の仕事は、今後も需要が高まる成長分野として期待されている一方で、建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻化しており、経験豊富な現場管理者の存在はますます重要になっています。

そこで期待されているのはICTの活用で、より効率的かつ安全な現場運営を実現すること目標とされています。例えば、BIM/CIMの3次元モデルを用いて設計・施工・維持管理までを効率化する技術やドローンによる測量や点検作業の効率化、安全性向上などです。その他、タブレットやスマホ端末、クラウドシステム、アプリなどのICTツールを駆使することで、現場管理の業務は大きく効率化し、より高度化していくことが予想されます。

ICT施工による新たな専門性や属人化などの問題点はまだまだ拭えない状況でありますが、現場管理の生産性向上に今後大きく貢献するためにも極めて重要な一手と言えるでしょう。