COLUMN

アスファルト舗装とは?メリットやデメリット、利用用途などを解説
日本の道路行政において、アスファルト舗装の道路が初めて登場したのは明治11年のことです。それ以来、日本全国でアスファルト舗装による道づくりが進められてきました。令和2年の時点で、簡易舗装を含めた道路の舗装率は約82.5%(うち一般国道は99.5%)に達しています。
交通の安全性・快適性を保持するため、アスファルト舗装は欠かせません。この記事では、アスファルト舗装のメリット・デメリットや、道路以外の利用用途について詳しく解説します。
まとめ
- ・アスファルト塗装とは、原油から精製される石油アスファルトを、砕石などの骨材と混ぜ合わせて路面に敷き固める舗装
- ・アスファルト舗装のメリットは、すぐに固まるため、完成までの時間が短く、低コスト、メンテナンス費用が安いなどが挙げられる
- ・アスファルト舗装のデメリットは、コンクリート舗装と比べて耐久性が低く、また、気温の影響を受けやすいため路面温度が上昇しやすいことが挙げられる
目次
アスファルト舗装とは

道路などに用いられる舗装は、大きく分けて「アスファルト舗装」と「コンクリート舗装」の2種類があります。
舗装の種類 | 素材 | 性質 | 用途 |
---|---|---|---|
アスファルト | アスファルト 骨材 | すぐ固まる 気温や路面温度に影響されやすい | 一般的な場所 |
コンクリート | セメント 水 骨材 | 固まるまでに時間がかかる 摩耗に強く、わだちができにくい | 大型車交通量が多く傷みやすい場所 補修が困難な場所(トンネルなど) |
アスファルト舗装とは、原油から精製されるアスファルト(石油アスファルト)を砕石などの骨材と混ぜ合わせ、路面に敷き固める舗装です。外観が暗褐色または黒色であることから、「黒舗装」とも呼ばれます。コンクリート舗装と比べ施工期間が短く、補修やメンテナンスも容易なため、日本の一般国道のうち大部分はアスファルト舗装です。
舗装に欠かせないアスファルト混合物
一般的なアスファルト舗装は、表層・基層・路盤(上層路盤・下層路盤)の3つの層に分かれています。このうち、表層・基層に用いられるのが「アスファルト混合物」です。
アスファルト舗装の構造 | 材料 |
---|---|
表層 | アスファルト混合物 |
基層 | |
上層路盤 | 粒度調整砕石 |
下層路盤 | 切り込み砕石 |
路床 | 地盤(関東ローム層など) |
アスファルト混合物とは、“砂利(最大粒径約2cm)と砂を混ぜ合わせたものに、約5~7%のアスファルトを熱して混ぜ合わせたもの”を指します。アスファルト混合物の厚みは、一般的に15cm程度です。
なお、アスファルト混合物は、加熱アスファルト混合物と常温アスファルト混合物の2種類に分けられます。
加熱アスファルト混合物 | アスファルトと骨材を混ぜ合わせ、加熱してつくった材料のこと |
---|---|
常温アスファルト混合物 | アスファルトを常温で取り扱えるように工夫した材料(アスファルト乳剤やカットバックアスファルトなど)のこと |
加熱アスファルト混合物と比べ、常温アスファルト混合物は耐久性が劣るものの、貯蔵ができるのが特徴です。加熱アスファルト混合物は車道などの舗装材、常温アスファルト混合物は簡易的な舗装材や、路面の傷んだ部分の補修材として用いられます。
アスファルト舗装は3種類ある
近年では、雨の日の走行安全性の向上や、ヒートアイランド現象の緩和などを目的として、新しい技術を用いたアスファルト舗装が普及しています。一般国道でも広く見られるのが、排水性舗装・透水性舗装・保水性舗装の3つです。
舗装の種類 | 構造 | 性質 | 効果 |
---|---|---|---|
排水性舗装 | 上部に透水層、直下に不透水層を設置 | 雨水は透水層を通り抜け、側溝へ流れ出る | 走行安全性向上 騒音低減 |
透水性舗装 | 全体を透水層とする | 雨水を地中に還元する | 水循環環境の保全(街路樹育成) 雨水の流出を抑制 |
保水性舗装 | 舗装の空隙に水を吸着する材料(保水材)を詰め、雨水をためる | 気温が上がったときに水分を蒸発させる | 路面の温度を下げる ヒートアイランド現象の緩和 |
例えば、東京都ではヒートアイランド対策の一環として、都心部などの車道に保水性舗装を行っています。保水材に含まれた水が蒸発するときの気化熱により、路面温度の上昇を最大で10度抑制することが可能です。
アスファルト舗装の4つのメリット

アスファルト舗装には、4つのメリットがあります。
・すぐに固まるため、完成までの時間が短い
・舗装工事にかかるコストが比較的安い
・コンクリート舗装と比べ、走行時の騒音が少ない
・補修やメンテナンスがしやすい
すぐに固まるため、完成までの時間が短い
アスファルトには、冷えると固まりやすいという性質があります。そのため、アスファルト舗装は完成までの工期が短く、表層・基層に敷き均したアスファルトが固まり次第、すぐに車両が走行可能です。施工も簡単なことから、国内のほとんどの道路がアスファルト舗装を採用しています。
舗装工事にかかるコストが比較的安い
アスファルト舗装には、工事費用が比較的安いというメリットもあります。施工方法にもよりますが、一般的にコンクリート舗装の半分ほどのコストで舗装することが可能です。
またアスファルト舗装は、工事にかかる時間や人手が少ないため、人件費も抑えられます。ただし、舗装の耐用年数なども考慮すると、長期的なコストではコンクリート舗装のほうが安くなる場合もあります。
コンクリート舗装と比べ、走行時の騒音が少ない
アスファルト舗装はコンクリート舗装と比べ、走行時の騒音が少ないのが特徴です。アスファルト舗装は表層部分の隙間が多く、走行車両のタイヤが立てる音を吸収する性質を持っているからです。またアスファルト舗装には、コンクリート舗装のような横目地(つなぎ目)がないため、騒音や振動が軽減されます。
アスファルト舗装の騒音の少なさを活かした、「低騒音舗装」と呼ばれる舗装もあります。低騒音舗装には、空隙の多いアスファルト混合物が採用されており、通常の舗装と比べ路面の騒音を約7デシベル抑制することが可能です。
補修やメンテナンスがしやすい
アスファルト舗装は、補修やメンテナンスがしやすいというメリットもあります。アスファルト混合物は、コンクリートと比べ柔軟性があるため、成形が比較的容易です。
必要に応じて、舗装の一部分のみを修繕することも可能です。路面の小さな穴やひび割れを発見し、速やかに応急措置を実施すれば、道路の安全性・快適性を維持できます。
アスファルト舗装の2つのデメリット
アスファルト舗装には、デメリットも2つあります。
・コンクリート舗装と比べ、耐久性が低い
・気温の影響を受けやすく、路面温度が上昇しやすい
コンクリート舗装と比べ、耐久性が低い

アスファルト舗装はコンクリート舗装と比べ、耐久性が低いという特徴があります。経年劣化とともに、ひび割れやわだち掘れができやすく、路面の平坦性も損なわれやすいのがデメリットです。
ひび割れ | 路面のクラックのことで、段差や騒音、振動の発生につながる |
---|---|
わだち掘れ | 横断方向の凹凸のことで、水はねや操舵性の低下につながる |
平坦性 | 縦断方向の凹凸のことで、乗り心地の低下や騒音、振動の発生につながる |
走行時の騒音が少ないとされるアスファルト舗装ですが、適切なメンテナンスを行わない場合、交通騒音が生じる可能性があります。大型車両の交通量が多いなど、路面が傷みやすい場所では、コンクリート舗装を用いるのが一般的です。
ただし近年では、従来のアスファルト(ストレートアスファルト)の性状を改善し、耐摩耗性やたわみにくさなどを高めた「改質アスファルト」も普及しつつあります。
気温の影響を受けやすく、路面温度が上昇しやすい
アスファルト舗装は黒色をしているため、熱を吸収しやすいのもデメリットです。特に真夏の日中には、路面が太陽光の日射エネルギーを吸収し、表面温度が60度を超えるケースもあります。都市部では、路面から放出される赤外放射が原因となる「ヒートアイランド現象」が問題化しています。
気象庁によると、都市化が進んだ地域の気温の上昇量は、そのほかの地域を0.4~1.7°Cも上回っています。その要因として、都市部に集中するアスファルト舗装からの排熱が挙げられています。
ただし、舗装の隙間に保水剤を詰める「保水性舗装」や、路面に太陽光を反射する遮熱材を塗布する「遮熱性舗装」など、ヒートアイランド現象を緩和するアスファルト舗装も普及しつつあります。
アスファルト舗装の主な利用用途は?
道路以外にも、アスファルト舗装は橋や鉄道路線、空港の滑走路、港湾のエプロンや臨港道路など、さまざまな場所で利用されています。ここでは、アスファルト舗装の主な利用用途を紹介します。
橋梁への利用
アスファルトは、コンクリートや鋼部材と並ぶ橋梁の主要部材の一つです。アスファルト舗装は防水効果が高いため、道路橋をはじめとした橋梁を保護し、走行性を維持するために用いられます。
鉄道への利用
アスファルト舗装は、鉄道路線にも利用されています。レールの枕木を支えるバラスト道床部にも、雨水の浸入を防止するため、アスファルトやコンクリートが用いられる場合があります。
空港への利用
アスファルト舗装は補修やメンテナンスが容易なため、空港にも用いられます。ただし、アスファルトはひび割れやわだち掘れができやすく、油分に弱いという特徴があります。空港では、燃料漏れの危険性が比較的少ない、滑走路や誘導路の一部にアスファルト塗装を採用するのが一般的です。
港湾への利用
港湾におけるエプロン(貨物の積卸しや荷さばきなどを行う場所)や、周辺の公道とつながる臨港道路にも、アスファルト舗装が用いられます。工期が短く、コストも比較的安価なアスファルト舗装は、道路舗装以外にもさまざまな利用用途があります。
アスファルト舗装の特徴やメリット・デメリットについて知ろう
道路舗装には、大きく分けてアスファルト舗装とコンクリート舗装の2種類があります。コンクリート舗装では、材料にセメントや水を用いるのに対し、アスファルト舗装はアスファルト混合物を用いるのが特徴です。
アスファルト舗装は完成までにかかる時間が短く、走行時の騒音が少ないというメリットがあります。また補修やメンテナンスが比較的容易なため、国内の一般国道のほとんどがアスファルト舗装です。
一方、アスファルト舗装には、コンクリート舗装と比べ耐久性が低く、ひび割れやわだち掘れができやすいというデメリットもあります。道路の安全性・快適性を保持するには、周辺の交通量や気象条件などを考慮し、舗装材料の強みを活かして施工することが大切です。