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道路工事とは?役割や工事の種類、4つの施工手順について解説
道路は、人々の移動や生活物資の輸送などに欠かすことのできない、重要な都市基盤施設です。日本の道路の総延長は、令和3年3月末の時点で128万3,725.6km(林道や農道を除く)に達しています。
道路自体にも寿命があるため、定期的に補修やメンテナンスを行わなければなりません。そのために国や自治体などが実施するのが道路工事です。この記事では、道路工事の役割や種類、施工の流れについて分かりやすく解説します。
まとめ
- ・道路工事とは道路の補修や整備、拡幅などを行う工事のこと
- ・路工事と占用工事の違いとして、道路工事は道路機能の維持や改良が挙げられ、占用工事は水道やガスなどライフラインを維持するための工事
- ・道路工事の種類は、新設工事、修繕工事、改良工事の3つがある
道路工事とは?

道路工事とは、主に道路の新設や補修、整備、拡幅(かくふく)などを行う工事です。路面の補修の他、分電盤やポンプ配管などの道路施設の改修も道路工事に含まれます。
道路の地下や上空には、水道管、ガス管、電線などのライフラインが通っています。道路工事と区別して、こうしたライフラインを維持するための工事が「占用工事」なのです。
道路工事と占用工事の違いは、それぞれ以下の表のとおりです。
目的 | 例 | |
---|---|---|
道路工事 | 道路の機能を維持したり、改良したりするための工事 | 道路維持補修工事 歩道設置・バリアフリー化工事 交差点改良工事 道路附属物(ガードレール、標識など)設置工事 電線共同溝(無電柱化)工事 植栽管理作業など |
占用工事 | 上下水道や電気、ガス、通信などのライフラインを維持するための工事 | 水道工事 下水道工事 電気工事 ガス工事 通信工事など |
道路工事と占用工事をあわせて、路上工事と呼びます。東京23区における集計では、路上工事の内訳は道路工事が約4割、ライフラインなどの占用工事が約6割となっています。
路上工事の種類 | 工事件数の割合 | |
---|---|---|
道路工事 | 43% | |
占用工事 | 上水道 | 12% |
下水道 | 13% | |
電話 | 4% | |
電力 | 9% | |
ガス | 6% | |
その他(地下鉄、首都高速など) | 13% |
道路工事は道路管理者が実施する
道路工事を実施するのは、道路法によって定められた道路管理者です。道路管理者には、管理する道路の種類に応じて、国土交通大臣、都道府県、または市町村のいずれかが選任されます。
道路管理者が管理する道路は、それぞれ以下の表のとおりです。
道路の種類 | 定義 | 道路管理者 | |
---|---|---|---|
高速自動車国道 | 全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し、かつ、政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡する道路その他国の利害に特に重大な関係を有する道路(高速自動車国道法第4条) | 国土交通大臣 | |
一般国道 | 直轄国道 (指定区間) | 高速自動車国道とあわせて全国的な幹線道路網を構成し、かつ一定の法定要件に該当する道路(道路法第5条) | 国土交通大臣 |
補助国道 (指定区間外) | 都府県 (政令指定都市) | ||
都道府県道 | 地方的な幹線道路網を構成し、かつ一定の法定要件に該当する道路(道路法第7条) | 都道府県 (政令指定都市) | |
市町村道 | 市町村の区域内に存する道路(道路法第8条) | 市町村 |
例えば、国が直接管理する国道(指定区間)の道路工事は、国土交通大臣から権限を委任された国道事務所の管轄です。一方、政令指定都市などが管理する国道(指定区間外)や、県道の道路工事は、都道府県の土木事務所が実施します。
道路管理者が分からない場合は、お近くの市役所または町村役場の窓口に問い合わせるとよいでしょう。
占用工事は許可を受けた事業者が実施する
占用工事を実施するのは、道路管理者から「道路の占用」の許可を受けた事業者です。道路の占用とは、道路に電柱やガードレールなどの施設を設置し、継続して道路を使用することを指します。地上にある道路施設だけでなく、上下水道や電気、ガス、通信などのライフラインを地下に埋設する際も、道路管理者の許可を受けなければなりません。
例えば、国道(指定区間)で占用工事を行う場合、国道事務所に道路の占用許可を申請する必要があります。
道路工事の3つの役割
道路工事には、大きく分けて3つの役割があります。
・快適な道路環境を維持するため
・新しくできた建物や施設に対応するため
・地震などの自然災害に備えるため
快適な道路環境を維持するため

道路工事の役割の一つは、快適な道路環境を維持することです。
道路の舗装は経年とともに、損傷や劣化が進んでいきます。道路環境が悪化すると、道路利用者の安全や快適性が損なわれるため、速やかに補修工事を行う必要があります。
国や自治体は、定期的に路面性状(ひび割れ・わだち掘れ・平たん性)の調査を実施し、補修が必要な道路の早期発見や、状況に応じた応急処置を行っています。
路面性状 | 特徴 |
---|---|
ひび割れ | 路面のクラックのことで、段差や騒音、振動の発生につながる |
わだち掘れ | 横断方向の凹凸のことで、水はねや操縦性の低下につながる |
平たん性 | 縦断方向の凹凸のことで、乗り心地の低下や騒音、振動の発生につながる |
新しくできた建物や施設に対応するため
道路の周辺に集合住宅やビル、商業施設などの建物が新しくできた場合、道路工事が必要になるケースがあります。例えば、既存の水道管や電線では供給量が不足する場合、増設工事や入れ替え工事を実施します。
生活に欠かせないライフライン施設を適切に管理するのも、道路工事(占用工事)の大切な役割の一つです。
地震などの自然災害に備えるため
道路工事には、地震などの自然災害に備える防災対策としての役割もあります。
道路の防災対策 | 目的 |
---|---|
耐震補強 | 地震による橋梁の落橋・倒壊などの防止 |
のり面(法面)・斜面の防災対策 | 落石や土石流、地すべりなどの防止 |
特に近年は、熊本地震で九州自動車道の跨道橋が落橋したことなどを踏まえて、道路の耐震補強を推進する自治体が増えています。
道路工事は3種類ある
道路工事は、以下の3つの種類に分けられます。
・新設工事
・修繕工事
・改良工事
新設工事
新設工事とは、これまで道路がなかった場所に、新しく道路を舗装する工事を指します。
国土交通省によると、日本国内の道路のうち、まだ舗装されていないものの割合は以下のとおりです。
年代 | 簡易舗装を含めた一般道路の舗装率 | うち一般国道 |
---|---|---|
昭和45年 | 15.0% | 78.6% |
令和2年 | 82.5% | 99.5% |
令和2年の時点では、一般道路の約17.5%(うち一般国道は約0.5%)がまだ舗装されていません。また舗装済みの道路の中には、アスファルト舗装などの本舗装とは異なる、簡易的な舗装の道路も含まれます。
新しく道路を舗装することで、交通安全対策の強化や、利用者の利便性向上につながります。また、自治体によっては、都市計画の一環として、新たにバイパスを建設するケースもあります。
修繕工事
修繕工事とは、道路補修工事とも呼ばれ、破損した舗装の整備やメンテナンスを行う工事です。舗装の破損状況には、機能的破損と構造的破損の2種類があり、状況に応じて適切な補修工法を選ぶ必要があります。
舗装の破損状況 | 特徴 |
---|---|
機能的破損 | 局所的なひび割れ・変形など 交通機能が低下する |
構造的破損 | 全体的な亀甲状のひび割れ 舗装全体が破損する |
また修繕工事には、道路本体だけでなく、道路上のさまざまな施設や構造物を補修・補強する工事も含まれます。
・標識
・街路灯
・ガードレール
・道路反射鏡
・電力設備(分電盤など)
・機械設備(ポンプ配管など)
改良工事

改良工事とは、既存の道路をより良くし、生活環境を改善するための工事です。例えば、狭い道路の幅を拡げたり、歩道や自転車レーンを設置したりする工事が当てはまります。
近年は改良工事の一環として、道路のバリアフリー化に取り組む自治体が増えています。例えば東京23区では、高齢者や障害のある方が快適に道路を通行できるように、以下のような改良工事を行っています。
歩車道段差の解消 | 横断歩道における歩道と車道の段差は標準で2cmとし、視覚障害者の安全な通行や、車いす使用者の利便性の向上を実現 |
---|---|
勾配の改善 | 歩道の縦断勾配は5%以下とし、高齢者や車いす使用者に配慮 |
視覚障害者誘導用ブロックの設置 | 視覚障害者が多く利用する道路には、点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)を接地 |
道路工事の施工手順を4つのステップで解説
ここでは、道路路面を補修する工事を例に挙げ、道路工事の施工手順を4つのステップで解説します。
1.現場の調査
2.補修工法の選択
3.工事調整
4.路面補修工事の実施
現場の調査
まずは現場を調査し、補修箇所の選定や優先順位付けを行います。主な調査方法には、路面性状調査や路面下空洞調査、騒音振動調査、道路巡回調査などがあります。
調査方法 | 特徴 |
---|---|
路面性状調査 | 道路のひび割れやわだち掘れ、平たん性などの路面性状を測定する調査 |
路面下空洞調査 | レーダーやスコープを用いて、路面下の空洞の有無や、深さ・厚さを測定する調査 |
騒音振動調査 | 道路交通時の騒音が、昼・夜間において要請限度(注)を超過していないか確認する調査 注:騒音規制法に基づき、環境省令で定められた自動車騒音の限度のこと |
道路巡回調査 | 道路巡回点検車を使用し、道路の損傷や劣化、道路上の落下物、街路灯などの不具合がないか目視で確認する調査 |
補修工法の選択
次に調査結果に基づいて、補修箇所の状況や規模を分析し、適切な補修工法を選択します。代表的な補修工法には、切削打換、部分断面打換、全断面打換などがあります。
補修工法 | 特徴 |
---|---|
切削打換 | 舗装の表面部分を補修する工法 |
部分断面打換 | アスファルトの部分全体を補修する工法 |
全断面打換 | 舗装全体を補修する工法 |
工事調整
補修工法が決まったら、道路管理者や警視庁、所轄警察署、占用企業者(電気やガスなどの事業者)などの関係者が集まり、道路工事調整会議を開催します。道路工事調整会議では、主に工事計画の策定・承認や、工事期間の調整を行います。
路面補修工事の実施
道路工事調整会議で承認された工事計画に基づき、路面の補修工事を行います。道路工事の実施にあたって、施工業者は道路管理者や所轄警察署による指導を受ける必要があります。
主な道路工事の種類や施工手順について知ろう
道路は、人や物資の輸送に必要不可欠なインフラです。道路の舗装や設備は、経年とともに劣化していくため、定期的に整備やメンテナンスを行う必要があります。
快適な道路環境を維持し、地震などの自然災害に備えるため、道路工事は欠かせません。道路工事の主な種類や、施工の流れについて知っておきましょう。