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橋梁工事とは?手順や橋梁工法の種類を分かりやすく解説
橋梁工事は人や物を繋ぐ橋を造り、社会インフラを支える重要な仕事です。この記事では、橋梁工事の手順や種類、工法、注意点までを分かりやすく解説します。橋を支えるための基礎工事から、橋ができるまでの過程を詳しく紹介します。
まとめ
- ・橋梁工事とは川や谷、道路などを跨ぐために橋を建設、または改修・撤去する工事のこと
- ・橋梁工事の手順は大きく下部工事・上部工事で分けられ、橋を支える土台を造った後に人や車が安全に利用できるように整えていく
- ・橋梁を造るための工法は、ベント工法や送り出し工法、ケーブルエレクション工法などいくつか種類があり周辺環境によって最適な工法が選択される
橋梁工事とは

橋梁工事とは、川や谷、道路などを跨ぐために橋を建設、または改修・撤去する工事のことです。人や物が安全かつ円滑に行き来できるよう、橋を築き、社会インフラを支える重要な役割を担っています。
現代社会において、都市化の進展に伴い交通量は増加し、橋梁への負荷も高まっています。また、地震や台風などの自然災害に対する安全性も求められています。そのため、より安全で耐久性の高い橋梁を建設・維持していくことが、現代社会における橋梁工事の重要な課題となっています。橋梁工事は、高度な技術と専門知識を必要とする、社会基盤整備に不可欠な仕事と言えるでしょう。
橋梁工事の手順
橋梁工事は、高い技術力と緻密な計画が必要な建設工事です。今回は橋梁工事の手順を、橋の土台を造る「下部工事」と橋桁や床版を設置する「上部工事」の二つに分けて、わかりやすく解説していきます。
下部工事
橋を安全に支えるための基礎を造る、土台となる重要な工事です。
・測量: まずは、正確な位置や高さを測量し、地盤の強度や地質を調査します。橋を支える地盤の状況を把握します。
・基礎工事: 調査結果に基づき、橋を支えるための基礎を造ります。地盤に杭を打ち込む「杭基礎」、地面に直接基礎を築く「直接基礎」、水中に箱状の構造物を沈める「ケーソン基礎」など、様々な工法があります。
・土留め工:必要に応じて、掘削した際に周囲の土砂が崩れるのを防ぐため、杭の周りに矢板を設置します。掘削機械によっては、土留めの役割を果たすものもあり簡略化されることもあります。
・掘削・支保工:地面を掘削し、支えとなる桁・梁を設置します。
・橋脚構築工: 次に、橋桁を支える橋脚を建てます。コンクリートを流し込むための型枠を設置し、流し込んで橋脚を造ります。
・埋め戻し: 最後に、掘り起こした土を埋め戻して下部工事完了です。
上部工事
橋桁や床版を設置し、橋の形が見えてくる工程です。
・橋桁架設: 橋桁を現場に運び、橋脚の上に架設します。巨大なクレーンで吊り上げたり、橋桁を少しずつ押し出すなど、ダイナミックな作業が見られます。
・床版工事: 橋桁の上に、私たちが歩くための床版を設置します。鉄筋コンクリート造や鋼鉄製などがあります。
・舗装工事: 床版の上に、アスファルト舗装やコンクリート舗装を施し、人や車が安全に通れるようにします。
・橋梁付属物工(設備工): 橋に付随する様々な設備や構造物を設置する工事のことです。例えば、照明装置や標識、防護柵などで、これらの付属物は橋の機能性や安全性を高めるだけでなく、景観を向上させる役割も担っています。
橋梁を造るための工法種類について

橋梁を建設するための工法は、橋の種類、架設場所の環境、工期、コストなど様々な要素を考慮して選択されます。
ベント工法(トラッククレーンベント工法)
ベント工法は、橋脚と橋脚の間に、仮設の支えとなる「ベント」を建てて、その上で橋桁を組み立てていく方法です。架設工法と比べて少ない設備で対応可能なため、工期やコストも抑えられ、多くの橋で採用されています。
ただし、ベントを設置するためのスペースが必要になるため、場所によっては使えないこともあります。
送り出し工法
送り出し工法は、橋台から橋桁を少しずつ押し出して架設していく方法です。谷間や河川など、ベントを設置するのが難しい場所に適しており、長大橋の建設で活躍しています。
ケーブルエレクション工法
ケーブルエレクション工法は、ケーブルクレーンを使って、橋桁を空から吊り上げて架設する方法です。高所作業や、ベントを設置できない場所に適しており、大型橋梁や斜張橋、吊橋などによく使われます。
フローティングクレーン工法
フローティングクレーン工法は、台船に搭載した大型クレーンを使って、橋桁を吊り上げて架設する方法です。海上や河川など、水深が深い場所に適しており、長大橋やアーチ橋などで利用されます。
一括架設工法
一括架設工法は、橋桁を陸上で組み立てて、巨大な台船で一括して架設場所に運び、設置する方法です。工期を大幅に短縮できるのがメリットで、海峡や河川など、水上輸送が可能な場所に適しています。
橋梁工事する上での注意点

橋梁工事は、大規模な構造物を扱うため、安全対策や周辺環境への配慮が不可欠です。工事に関わる全ての人が安全に作業を進められるよう、綿密な計画と適切な安全管理が求められます。
工事中の安全対策
橋梁工事は高所作業や重機作業などを伴うため、作業員の安全確保が最優先事項です。作業開始前の安全教育の徹底、安全設備の設置と定期的な点検、リスクアセスメントの実施などを通して、事故発生のリスクを最小限に抑える必要があります。また、緊急時対応マニュアルを作成し、迅速かつ適切な対応ができる体制を整えることが重要です。
環境保全への取り組み
橋梁工事は周辺環境に少なからず影響を与える可能性があるため、環境保全への配慮も不可欠です。着工前に周辺環境への影響調査を実施し、予測される影響に基づいた対策を講じる必要があります。具体的には、騒音・振動対策、水質・大気汚染防止対策、建設発生土の適切な処理などが挙げられます。
近隣住民への配慮
橋梁工事は近隣住民の生活にも影響を与える可能性があります。予想される影響とその対策についての窓口を設置することで、住民の理解と協力を得ることが重要です。また、工事期間中は苦情受付窓口を設置し、住民からの意見や要望に迅速に対応する必要があります。交通規制情報などを積極的に提供することで、住民の日常生活への影響を最小限に抑えるよう努めることも大切です。
橋梁工事の重要性を再確認
橋梁工事は、私たちの生活を支える重要な社会基盤である橋を建設・維持するため、欠かすことのできないものです。人々の移動や物流を円滑にし、地域社会の発展に大きく貢献しています。橋は、単に場所と場所をつなぐだけでなく、経済活動の活性化や災害時の緊急輸送路の確保など、多様な役割を担っています。近年、橋梁の老朽化も問題として挙がっており、橋梁工事は未来社会を築く上で、その重要性は今後ますます高まっていくでしょう。