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2025.01.07 BRIDGE

橋桁とは?橋梁における役割や種類を解説

橋桁は橋を支える重要な構造物なので、最適な橋桁を選ぶことは橋の安全性、耐久性、そして経済性を左右する重要な決定です。最適な橋桁の選定には、様々な要素を総合的に考慮する必要があります。本記事では橋桁の役割や種類、選定の仕方などを解説していきます。

まとめ

  • ・橋桁とは、橋の上部構造を支える水平部材(簡単に言うと一般的に人や車両が通る床版を支える部分)を指す
  • ・橋桁の種類は、断面構造や連続性によって分かれる
  • ・橋桁の主な役割は、橋面にかかる荷重を支え、橋脚や橋台に伝えること

橋桁とは?設置場所と役割について

橋桁とは、橋を構成する主要な構造部材の一つで、橋の上部構造を支える水平部材簡単に言うと一般的に人や車両が通る床版を支える部分)を指します。
橋桁の主な役割は、橋面にかかる荷重(車両や歩行者などの重量、風荷重、雪荷重など)を支え、橋脚や橋台に伝えることです。橋桁はこれらの荷重に耐えられるように、強度や剛性、耐久性などが考慮して設計されています。

橋桁の種類

橋を設置する環境や規模によって、利用される橋桁も様々です。断面構造的な種類の分け方や、橋桁を連続して利用するかなどの切り口によって、橋桁の種類の呼び名が変わりますので解説していきます。

断面構造による違い

橋桁は、その断面構造によって様々な種類に分類されます。断面形状の違いは、橋桁の強度や剛性、そして経済性に大きく影響します。代表的な断面構造を以下に示します。

断面形状特徴よく使われる橋の種類
T形桁圧縮に強いフランジとせん断に強いウェブで構成され、効率的な断面です。道路橋、鉄道橋
箱桁ねじり剛性が高く、長大橋に適しています。高速道路の高架橋、斜張橋、吊橋
I桁(H形桁)上下に対称な断面で、圧縮と引張の両方に抵抗できます。比較的小規模な橋梁

T形桁

T形桁は、断面がアルファベットの「T」字型に似ていることから名付けられました。上部のフランジが圧縮力、下部のウェブがせん断力に抵抗する構造です。材料を効率的に使用できるため、道路橋や鉄道橋で広く採用されています。

箱桁

箱桁は、断面が中空の箱型になっている桁です。ねじり剛性が高いため、長大橋や曲線橋に適しています。高速道路の高架橋や、斜張橋、吊橋などでよく用いられます。

I形桁(H形桁)

I形桁は、断面がアルファベットの「I」字型に似ていることからその名がつけられています。上下のフランジが圧縮と引張に抵抗する構造で、比較的小規模な橋梁に使用されます。工期が短く、小規模な橋梁に使われることが多いです。

つなぎ方(連続性)による違い

橋桁は、そのつなぎ方(連続性)によっても分類できます。橋桁の連続性とは、橋脚や橋台などの支点上で橋桁がどのように接続されているかを指します。大きく分けて、単純桁、連続桁、ゲルバー桁の3種類があります。それぞれ解説していきましょう。

単純桁

単純桁は、橋桁の中でも最も基本的な形です。1つのスパン(橋脚と橋脚の間)を1本の桁で構成しているため、構造がシンプルでわかりやすいのが最大のメリットです。
このシンプルな構造のおかげで設計や建設が比較的容易で、工期を短縮できるだけでなくコストも抑えられます。また、点検や補修などの維持管理もしやすいというメリットもあります。
しかし、単純桁は、長いスパンを架けるのには不向きです。スパンが長くなると、桁に大きな負担がかかり、強度を保つのが難しくなります。さらに、荷重によって桁がしなりやすい、つまり「たわみ」が大きくなるというデメリットもあります。たわみが大きすぎると、乗り心地が悪かったり、橋の耐久性に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、単純桁は、スパンが短い橋や、交通量の少ない橋に適しています。

連続桁

長いスパンを架ける必要がある橋や、交通量の多い橋に用いられるのが「連続桁」です。単純桁では1つのスパンを1本の桁で構成していましたが、連続桁は複数のスパンを連続して1本の桁で構成します。
イメージとしては、複数の単純桁を繋げて一体化させたような構造です。連続桁は、複数の支点で支えられているため、安定性が高く、スパン中央にかかる曲げモーメントを小さくすることができます。
連続桁は、中規模から大規模な橋に用いられることが多く、高速道路や幹線道路などで見られます。

ゲルバー桁

ゲルバー桁は、片側だけが固定された梁(カンチレバー、片持ち梁ともいう) からヒンジ(橋の継ぎ目)で連続させていく構造の橋桁です。連続桁はヒンジ部分でつなぎ合わせるわけでなく、一本となり、ゲルバー桁はつなぎ合わせていくイメージを持つとわかりやすいです。
地盤が不安定な場所や、沈下しやすい場所など複雑な地形を得意とする代わりに、他の桁と比べると設計や施工にはかなり高度な技術が必要となります。

橋桁を選定するにあたって

最適な橋桁の選定には、様々な要素を総合的に考慮する必要があります。主な選定基準は以下の点が考えられますので参考にご覧ください。

1. 橋梁の規模と形式
支間長: 橋脚と橋脚の間の距離。支間長が長いほど、より強度の高い橋桁が必要となります。
橋梁形式: 桁橋、アーチ橋、吊橋、斜張橋など、橋の形式によって適した橋桁の種類が異なります。
交通量: 通行する車両の量や種類、重量によって、橋桁にかかる荷重が変化します。

2. 地形・地質条件
地盤の強度: 橋桁を支える地盤の強度が十分でなければ、橋全体の安定性に影響します。
河川や渓谷の状況: 河川や渓谷の幅、水深、流速、河床の状況などが橋桁の設計に影響します。
地震の影響: 地震の発生頻度や規模を考慮し、耐震性に優れた橋桁を選ぶ必要があります。

3. 環境条件
気温の変化: 気温の変化によって、橋梁の伸縮を考慮する必要があります。
風や雪の影響: 強風や積雪による荷重に耐えられる橋桁を選ぶ必要があります。
塩害: 海に近い地域では、塩害による腐食に強い材料を選ぶ必要があります。

4. 材料特性
強度: 橋桁に用いる材料の強度が十分でなければなりません。
耐久性: 長期間にわたって使用できる耐久性が必要です。
経済性: 材料の価格や入手性を考慮する必要があります。
施工性: 材料の加工や組み立ての容易さを考慮する必要があります。
維持管理: 維持管理の容易さも重要な要素です。

5. 景観
周辺環境との調和: 橋桁のデザインが周辺の景観に調和するものである必要があります。
美観: 美しいデザインの橋桁が求められる場合があります。

6. その他
工期: 工期の短縮が求められる場合があります。
技術的な制約: 最新技術の導入や特殊な技術が必要となる場合があります。

これらの選定基準を総合的に評価し、最適な橋桁を選定する必要があります。そのためには、専門的な知識を持つ技術者による綿密な検討が不可欠です。

維持管理の重要性

橋梁全体にも言えることですが、維持管理は安全性、耐久性、そして寿命を左右する重要な要素です。その中でも、橋桁は人が直接わたる箇所でもあるため、維持管理を怠ると、以下のような問題が発生する可能性があります。

落橋事故の発生: 腐食や劣化が進行した橋桁は強度が低下し、落橋事故を引き起こす可能性があります。これは人命に関わる重大な事故につながる可能性があります。
交通規制による経済的損失: 橋桁の損傷がひどい場合は、通行止めや交通規制が必要となり、経済活動や人々の生活に大きな影響を与えます。
補修・改修費用の増大: 軽微な損傷を放置すると、大きな損傷に発展し、補修・改修費用が大幅に増大する可能性があります。
景観の悪化: 人の目に触れやすい箇所ということもあり、錆やひび割れが発生した橋桁は景観を損ないます。

橋桁の維持管理には、以下のような活動が含まれます。

まとめ

橋桁は橋梁を支える主要な構造部材であり、橋梁全体の安全性や耐久性、そして経済性に大きく影響します。適切な橋桁の選定は橋梁の長寿命化、ひいては社会インフラの持続可能性に直結します。橋梁の規模や用途、架設環境、経済性など様々な条件を考慮し、最適な橋桁の種類が選ばれます。

これからの橋梁建設においては、維持管理の効率化、長寿命化への要求はますます高まると予想されます。それに伴い、耐震性や耐久性に優れた新素材の開発や、点検・補修技術の進歩が期待されます。これらの技術革新は橋桁の設計・施工にも大きな変化をもたらし、より安全で持続可能な社会基盤の構築に貢献していくと考えられます。

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