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2024.12.05 BRIDGE

橋梁(橋)とは?種類や構造をわかりやすく解説

橋梁(橋)とは、川や谷、道路、線路などの障害物を越えて人や車が安全に渡れるように架けられた構造物です。橋梁は単にA地点とB地点を物理的につなぐだけでなく、以下の表のように、私たちの日常生活において様々な重要な役割を担っています。

役割 説明
交通の円滑化 人や車、鉄道などがスムーズに移動できるようになり、経済活動や社会活動を支えています。
経済活動への貢献 交通アクセスの改善による物流コスト低減や企業立地の促進、観光振興などに期待が持てます。
災害時の避難路確保 洪水や地震などの災害時に、避難路や緊急輸送路を確保する上で重要な役割を果たします。

本記事では橋梁の種類や構造について、詳細に解説していきます。

まとめ

  • ・橋梁と橋は同じ意味で、川や谷、道路、線路などの障害物を越えて人や車が安全に渡れるように架けられた構造物を指す
  • ・橋梁の種類は構造形式と材料によって分類され、10種類以上存在する
  • ・橋梁の構造は大きく分けて人や車が主に利用する上部構造と、橋を支える下部構造の2つから構成される

橋梁の種類

橋梁は、その構造形式、材料によって様々な種類に分類されます。ここでは、代表的な橋の種類をご紹介します。

構造形式による分類

力の伝わり方や形状に着目した分類です。桁橋、アーチ橋、吊橋などが代表例として挙げられますが、その他にも多くの種類があるため、1つ1つ解説してきます。

桁橋

桁橋は、橋脚や橋台などの支点上に水平に架け渡された桁の上に、床版を設けて荷重を支える構造の橋です。構造がシンプルで建設コストが比較的安価であるため、世界中で最も多く採用されている橋梁形式の一つです。

アーチ橋

アーチ橋は、アーチ型の構造を利用して荷重を支える橋です。その美しい形状から景観にも馴染みやすく、世界各地で古くから建造されてきました。

アーチ橋の力学的特性は、鉛直方向の荷重をアーチの圧縮力に変換することで、橋全体を効率よく支えることです。このため、コンクリートや石材といった圧縮に強い材料が適しています。

吊橋

吊橋は、主ケーブルを塔にかけ、そこからハンガーロープで橋桁を吊り下げる構造の橋です。長大スパンの橋梁建設に適しており、優美な外観も特徴です。

斜張橋

斜張橋は、主塔から斜めに張られたケーブルによって橋桁を支える構造の橋です。その優美な外観から、現代的な橋梁の象徴として世界中で人気があります。斜材(ケーブル)は、橋桁の重さを支え、塔に伝える役割を担っています。

ケーブルイグレット橋

ケーブルイグレット橋は、斜張橋と吊橋の特徴を組み合わせた構造形式です。主塔から斜めに張られたケーブル(斜材)で橋桁を支える点では斜張橋と同様ですが、ケーブルイグレット橋では、さらに短いケーブル(イグレット)を主ケーブルから橋桁に直接繋ぎます。このイグレットが、斜材の張力を分散させ、より効率的に橋桁を支える役割を果たします。

トラス橋

トラス橋とは、三角形を基本単位として組み合わせた「トラス構造」を主構造とする橋です。三角形は力を分散させるのに優れているため、高い強度と安定性を持ち、長大橋にも適しています。

ラーメン橋

ラーメン橋は、橋桁と橋脚が一体となった構造を持つ橋のことを指します。ラーメン構造は、部材同士が剛接合されているため、曲げモーメントやせん断力を効率的に分散させることができます。この構造により、長大なスパンを実現することが可能となります。

ゲルバー橋

ゲルバー橋は、カンチレバー橋と吊橋の構造を組み合わせた橋です。中央部に短い吊橋部分を設け、その両端をカンチレバーで支える構造が特徴です。ゲルバー橋は、長大橋に適しており、経済的な建設が可能というメリットがあります。

材料による分類

橋梁は、使用されている材料によっても分類できます。それぞれの材料には特性があり、橋の構造や目的に合わせて使い分けられています。

木橋

木橋は、その名の通り木材を主要な材料として作られた橋です。古くから世界中で利用されてきた歴史ある橋梁形式であり、現在でもその温かみのある風合いから、景観に配慮した場所に多く架けられています。

石橋

石橋は、その名の通り石を主要な材料として作られた橋です。古くから世界中で建造されており、現存する最古のものは紀元前13世紀にギリシャで造られたミケーネ橋といわれています。日本では、奈良県明日香村にある猿石橋が7世紀頃に造られたと推定されており、現存する最古の石橋と考えられています。

鋼橋

鋼橋は、主材料に鋼を使用した橋です。鋼は強度が高く、大きなスパンの橋を建設できることが特徴です。また、工場で部材を製作し、現場で組み立てるため、工期短縮にも繋がります。

コンクリート橋(無筋・PC橋)

コンクリート橋は、圧縮力に強いコンクリートを主要な材料として作られた橋です。無筋コンクリート橋とプレストレストコンクリート橋(PC橋)に大別されます。

無筋コンクリート橋は、鉄筋を使用しないコンクリートのみで構成された橋です。古くから利用されており、アーチ橋や桁橋などに用いられています。比較的単純な構造で、材料も安価であるため、小規模な橋に向いています。しかし、引張力に弱いため、長スパンの橋には適していません。

一方、PC橋は、コンクリートにあらかじめ圧縮力を加えることで、引張力に対する抵抗力を高めた橋です。これにより、長スパン化が可能となり、現代の橋梁建設において主流となっています。

鉄筋コンクリート橋(RC橋)

鉄筋コンクリート橋(RC橋)は、コンクリートの中に鉄筋を配した構造の橋です。コンクリートの圧縮強度と鉄筋の引張強度を組み合わせることで、高い強度と耐久性を実現しています。20世紀に入り広く普及し、現在でも多くの橋梁で採用されている、代表的な橋梁形式の一つです。

複合橋

複合橋とは、異なる材料を組み合わせて建設された橋のことを指します。それぞれの材料のメリットを活かし、デメリットを補うことで、より優れた性能を発揮できます。代表的な組み合わせとしては、鋼橋とコンクリート橋を組み合わせた「鋼コンクリート複合橋」があります。

材料の組み合わせメリットデメリット使用例
鋼 + コンクリート・高い強度と耐久性 ・経済的な建設コスト・設計・施工が複雑になる場合がある高速道路の橋梁など
鋼 + 木・軽量で耐震性が高い ・景観に配慮しやすい・木材の腐朽対策が必要歩道橋など
コンクリート + PC鋼材・プレストレス効果による高強度化 ・耐久性の向上・PC鋼材の腐食対策が必要長大橋など

橋の構造

橋梁は、大きく分けて 上部構造下部構造 の2つから構成されています。それぞれを詳しく見ていきましょう。

上部構造

橋の上部、つまり私たちが普段目にする部分です。主な構成要素は以下の通りです

橋桁(主桁)

橋のメインとなる構造部材で、橋桁とも呼ばれます。車や人の重さを支え、橋台や橋脚に伝えます。

床版

橋桁の上に設置され、車や人が直接通行する部分です。

横桁

橋桁を横方向につなぎ、荷重を分散させる役割を担います。

対傾構

主桁の横方向の変形を防ぎ、安定性を高めます。

高欄

橋の両側に設置され、人や車が落下するのを防ぎます。

伸縮装置

気温変化による橋の伸縮を吸収し、橋本体への負担を軽減します。

支承

橋の支承とは、上部構造と下部構造の間に設置される部材です。橋の上部構造(橋桁など)を支え、橋に作用する荷重を下部構造(橋台、橋脚)へ伝える役割を担っています。

下部構造(橋台、橋脚、基礎)

橋の下部構造は、上部構造を支え、荷重を地盤に伝える重要な役割を担っています。主な構成要素は、橋台、橋脚、基礎の3つです。これらが一体となって橋を安定させ、安全性を確保しています。

橋脚

橋の中間部に位置し、上部構造を支えます。複数設置されることが多く、橋の長さに応じて配置や数が異なります。

橋台

橋の両端部に位置し、土圧や上部構造からの荷重を支えます。また、橋桁の端部を固定または支持する役割も担います。

基礎

橋台や橋脚を支え、地盤に荷重を伝達します。地盤の強度や特性に応じて、適切な基礎形式が選択されます。

基礎には、直接基礎、杭基礎、ケーソン基礎など様々な種類があります。地盤が強固な場合は直接基礎が用いられますが、軟弱地盤の場合は、杭を地中に打ち込む杭基礎や、水中の場合は、大きな箱状の構造物を沈設するケーソン基礎などが採用されます。

橋の維持管理

橋は、常に風雨や交通荷重にさらされているため、適切な維持管理が不可欠です。安全で快適な通行を確保し、橋の寿命を延ばすためには、定期的な点検・補修・補強が必要です。

点検、補修、補強、架け替え

点検では、目視や打音検査、ひび割れ調査などを行い、橋の状態を詳細に把握します。専用の機器を用いた精密検査など、様々な方法でひび割れや腐食の有無、部材の劣化度合いなどを調べます。補修は、損傷の程度に応じて行われ、ひび割れへの注入や鋼材の補強などが実施されます。

補修・補強の対応例内容
表面被覆工コンクリート表面の劣化を抑制
ひび割れ補修工ひび割れに樹脂を注入
鋼材補強工鋼板を貼り付けて補強
部材交換損傷した部材を新しいものと交換

老朽化が進み補修では対応できない場合や、交通量の増加に対応する場合などは既存の橋を新しい橋に置き換える作業、即ち架け替えが発生します。いずれの場合でも、周辺環境への影響を最小限に抑えながら、安全かつ効率的に行う必要があります。

長寿命化への取り組み

橋梁の老朽化が社会問題となる中、長寿命化のための取り組みはますます重要になっています。建設後も適切な維持管理を行うことで、橋の寿命を延ばし、安全性を確保することができます。

近年注目されている技術として、センサーなどを使ったモニタリングシステムの導入があります。橋梁の状態をリアルタイムで監視することで、迅速な対応が可能になり、効率的な維持管理につながります。また、新材料の開発も進んでおり、従来の材料よりも耐久性・耐腐食性に優れた材料が実用化されつつあります。これらの技術革新は、橋の長寿命化に大きく貢献すると期待されています。

最新技術の活用

橋梁の長寿命化や効率的な維持管理には、最新技術の活用が不可欠です。ここでは、代表的な技術をいくつかご紹介します。

まず、点検の効率化に貢献しているのが、ドローンやロボット技術です。従来は、高所や水中など危険を伴う場所の点検は、作業員の安全確保に多大な労力を要しました。しかし、ドローンやロボットを活用することで、安全かつ迅速な点検が可能になります。特に、橋梁下面の点検では、接近が困難な箇所も詳細に検査できるため、ひび割れや腐食などの早期発見につながります。

次に、センサー技術も重要な役割を果たしています。橋梁に設置したセンサーから得られるデータは、リアルタイムで橋の状態を把握するのに役立ちます。例えば、振動やひずみ、温度、風速などのデータを常時監視することで、異常の早期発見や劣化状況の予測が可能になります。

技術概要効果
ドローン空撮による点検安全性向上、効率化
ロボット橋梁下面などの点検安全性向上、精度向上
センサー各種データの収集・分析劣化状況の把握、異常の早期発見
AIデータ分析、劣化予測効率的な維持管理

さらに、AI(人工知能)によるデータ分析も注目されています。膨大なセンサーデータや過去の点検記録をAIが学習することで、橋梁の劣化状況をより正確に予測することが可能になります。これにより、適切な時期に補修工事を実施できるため、長寿命化とコスト削減の両立に貢献します。これらの最新技術は、橋梁の維持管理をより効率的かつ高度なものへと進化させていくでしょう。

最後に、未来の橋について

未来の橋は、高度な技術革新を取り入れ、安全性や耐久性の向上だけでなく、環境への配慮やスマート化といった新たな価値を創造していくことが期待されています。ここでは、その一端をご紹介します。

新材料、新技術の開発

まず、材料面では、軽量かつ高強度な繊維強化プラスチック(FRP)や、自己修復機能を持つコンクリートなどが注目されています。FRPは、腐食に強く、メンテナンスコストの削減に繋がります。一方、自己修復コンクリートは、最大幅1mmまでのひび割れを自動的に修復することで、橋梁の寿命を延ばすことが期待されています。

環境への配慮

橋梁建設は環境に大きな影響を与える可能性があるため、環境負荷を低減するための様々な取り組みが重要になっています。具体的には、以下の3つの観点があります。

1.     建設資材
2.     建設時の影響
3.     維持管理

観点内容具体例
建設資材環境負荷の少ない材料を使用するリサイクル材料、地域産材
建設時の影響周辺環境への影響を最小限にする工事騒音、振動、水質汚濁の抑制
維持管理長寿命化、省エネルギー化劣化診断技術、耐久性向上技術

例えば、建設資材においては、環境負荷の少ないリサイクル材料や地域産材を積極的に活用することで、二酸化炭素排出量の削減に貢献できます。建設時には、工事による騒音や振動、水質汚濁などを最小限に抑える工夫が求められます。また、維持管理においては、劣化診断技術や耐久性向上技術などを活用することで長寿命化を図り、省エネルギー化にも繋げることが重要です。

さらに、近年注目されているのが「自然環境との調和」です。橋梁のデザインを周辺の景観に配慮したものにすることで、生態系への影響を最小限に抑え、美しい景観を保全することに繋がります。

これらの取り組みを通じて、環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献する橋梁建設が目指されています。

スマートブリッジ

未来の橋は、高度な技術革新を取り入れ、安全性と利便性を向上させるスマートブリッジの時代へと進んでいます。IoTやAIなどの最新技術を活用することで、橋の維持管理の効率化、災害時の迅速な対応、そして持続可能な社会の実現に貢献します。

具体的には、橋に設置されたセンサーがリアルタイムで橋の状態(腐食・ひび割れ・振動など)を監視し、データを収集・分析します。これにより、損傷の早期発見や劣化予測が可能となり、適切なタイミングで補修工事を行うことができるだけでなく、現場派遣による人のチェックが簡略化されます。また、取得したデータはクラウド上で共有され、管理者や関係機関がいつでもアクセスできるため、迅速な意思決定と効率的な維持管理体制の構築に役立ちます。

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